kikkiiのブログ

ひきこもり

菜の花畑

五月の三分の二が過ぎた頃、離れて住んでいた弟が帰ってきた。 「一ヶ月ぐらい居させてもらう」と親に話している声を聞いたが、気が変わるかのしれないし、何が本当のことか分からない。 もともと彼が何の仕事をしていたか私は知らないが、そんなに長い休みがあるということは、仕事は辞めたのだろう。

胸がざわざわして嫌な予感がする。 弟と顔を合わせないように部屋から出ないように心がけている。 ドタドタ歩きまわる弟の足音を聞きながら部屋にこもり、少し窮屈だと感じている。 トイレを済ませて戻るとき弟と鉢合わせして「太ったなあ」と大声で話しかけてきた。 私は顔を見られないようにして部屋にこもった。私はどんどん醜くくなっていく。


先日、弟が帰っきてから一週間経ったある日、父が運転する車でドライブに行くことになった。 母が助手席、私と弟は後部座席に座った。 「これでみんなで一緒にどこかに行くのは最後になるかもしれない」と言って父は車を出発させて、 父と母が何度か一緒に訪れた場所に私と弟を連れて行ってくれた。

山に行って、湖に行って、菜の花畑に行った。 一面黄色の菜の花畑は、安らかに死んだ後に横たわる世界に似ていた。 生前やってきたことや、何もしなかったことなど、どうしようもないので、私には行けない場所だと思う。

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