kikkiiのブログ

ひきこもり

パウンド

 哲学者でありレスラーでもあったプラトンは、パンクラチオンを「不完全なレスリングと不完全なボクシングが一つとなった競技である」と評した。プラトン総合格闘技(MMA)が嫌いなようだ。私は不完全になってしまうことに魅力を感じる。

 パウンドMMAにしかない技術だ。MMAを見るときはパウンドを好きになるべきだとおもう。パウンドを打つためには、タックルや投げ技などでテイクダウンを奪い、グラウンドで上のポジションを取らなければならない。そして寝ている相手に上から強いパンチを打つ。上手くパウンドを継続して打つためには カレッジレスリン1 で相手の身体をコントロールしなければならない。

 腰が入っていないパンチでもノックアウトできれば、それは良いパンチ。パウンドの暴力性を高めるためには、手打ちでも強いパンチを打つ力が必要だ。スタンドで打つときと違う筋肉を上手く動員するメカニズムを身体で学んでいく。ポジションの取り合いで揺れ動く複雑な状況の力学も利用していく。パウンド可能な色々な場面で柔軟に暴力を行うことによって培われた能力がスタンドで殴り合う状況にも染み出して、ボクシングの綺麗なパンチではない、野獣的な殴り合いになっていく気がする。


 グランドでの攻防で相手を殴ることは、レスリングやボクシングで禁止されている。「禁止したままにすれば完全なイデアに近づく」とプラトンは言うかもしれない。私はプラトンが不完全だと感じた部分の技術を洗練させてほしい。純粋だが不法なアナキストはだだの不完全な野獣だ。合法的で知的なアナキストのような理知的な野獣を筋肉の隅々まで住まわしている選手がいい。


 私は布団を丸めて殴ろうとおもう。発作的に生じる呪詛も爽やかに丸めて殴れればいい。私は狂っていない。私は怒ってはいない。私はパウンドのことを考えているだけなので。



  1. フリースタイルやグレコローマンでなく、カレッジスタイルを経験してきたから米国人レスラーはMMAに馴染みやすいらしい。mmaplanet.jp